アンフィンゼンのドグマ

アンフィンゼンのドグマとはタンパク質科学における最も重要な原理のひとつである.多くの研究がこの原理の上に成り立っているといえる.アンフィンゼンのドグマとは'タンパク質のネイティブな立体構造はそのアミノ酸の配列情報によって一意に規定される'というものである.この定説は,1950年代のアンフィンゼン (Anfinsen) によるリボヌクレアーゼA (RNaseA) を用いた実験により確立された.

RNaseA

上はRNaseAの立体構造である.アンフィンゼンは試験管内におけるRNasaAの溶液に変性剤 (尿素) を添加することで変性させ,酵素活性を失活させた.しかし引き続いて行った変性剤を溶液中から取り除くという実験で,失活させた酵素活性が回復することが明らかになった.つまりこの実験事実から,正確なアミノ酸配列を構築するために必要な要素はアミノ酸配列のみであることが見い出された.以上が"タンパク質のネイティブな立体構造はアミノ酸配列のみによって規定される"というアンフィンゼンのドグマが確立されるに至った経緯である,この定説は,RNasaAに限らず多くのタンパク質において成り立っている.

しかし,長らく受け入れられてきた以上の定説であるが,1980年代初頭に反例が発見された.プリオンタンパク質のアミノ酸配列は健常なヒト体内で発現される正常型タンパク質と完全に一致するにも関わらず,その立体構造には大きな違いがある.アミノ酸配列によってタンパク質構造が一意に決定されない好例である.'ネイティブな立体構造'の定義によるものの,プリオンタンパク質の存在はアンフィンゼンのドグマの反例となり得る.その他のアミロイド病,アルツハイマー病やパーキンソン病もタンパク質のフォールディングの変化 (ミスフォールディング) が原因となる病気 (フォールディング病) であり,アンフィンゼンのドグマの反例といえる.

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